【コラム】そこそこ大人になってからの体験学習、そこで得られるもの

 社内で新たなプロジェクトを立ち上げる、または、クライアントに対して提案をするなどは日々ビジネスを行なっている上では、日常茶飯のこと思います。しかしながら、企画書、提案書をまとめ上げるとき、自分の知識とインターネットで検索して、使えそうな記事をコピペしてまとめ上げて、プレゼンしてしまうなどの状況が幾度かはあるのではないでしょうか?
 その結果、見栄えは良いけれども、どこにでもありそうな無難なものに仕上がり、「これって、別にうちの会社でなくてもいいよね?」と、かえって信頼を失ってしまったりすることも考えられます。

そこで、違った観点からものごとを捉える方法として、実際の現場体験を通して学び、知識、知恵を織り込んでみる事を考えてみます。

■現実は数字より重い

 ITを活用して様々な分野で改善、効率化が行われていますが、ディスプレーに映し出される数字、プリントアウトされた数字のみを頼りにして計画をまとめあげるだけでは実態を捉えるには至りません。特に自分が関わったことの無い分野にチャレンジするためには、尚更のことです。

 例えば、物流システム(ITだけではなく、作業を含めた広義として)の改善を提案する際に、出荷量として「缶ビール350ml、24缶入り 100ケース」とあった場合、数字の上からそれがどれくらいの重さを感じられるられるでしょうか?

350mlを350gに換算して、24缶だと梱包を入れて約9Kg
100ケースとなると900Kgになります。

 物流倉庫の中では、日々バッチ(出荷する作業情報を時間分割して行う)によって出荷先ごとにピッキング、検品等がされています。
大抵ピッキングは人の手によって、銘柄ごとに分けられたパレットに載せられた場所から、台車やカゴに注文ごとに移し替えられます。
9Kgの商品を100ケースを移し替えるのは、慣れていないとなかなか容易なことではありません。人間ですから疲れてきますし、腰や膝にもきます。
更に、スピードの早いフォークリフトを避けながら台車やカゴをゴロゴロと出荷場所まで運んで行きます。

 夏場であれば、汗を多くかき水分補給も十分に取らなければなりません。

 こうした事を自ら体験することによって、実態を感じることができます。そこには、丈夫で軽量なカゴの導入や温度管理、商品配置場所の変更等数字では見えてこない部分を改善することによって、新たな効率化や安全面での配慮が考えられる来るのではないでしょうか?

■現場の意見を聞く

 新たな事を考える時に良く有る姿が、「現場の意見を聞く」と称して会議の場に呼ばれて、管理職を前にして「今日は皆さんの忌憚のないご意見を聞かせてください」などの情報交換がなされます。
 これもある意味で滑稽な姿で、上司や、まして普段あまり顔を合わせたことのない人を前にして本音を言える人がどれ程いるでしょうか?

 それであるならば、共に作業をして休憩時間などに「○○の作業はきついねえ、それに対してどう思いますか?」など聞いた方が、同じ作業をした者通し少しは本音を聞くことができるのではないかと思います。なにもヒアリングやグループインタビューを行う場や時間を設ける必要も無くなるのではないかと思います。

■自分の知識を疑い感性を研ぎ澄ます

 今まで蓄えて来た知識、経験はなにものにも代えがたいものであります。しかしながら、その知識は今の現状に即したものでしょうか?今までの経験の中だけで物事を捉えていないでしょうか?物事を固執して考えていないでしょうか?インターネットで得た情報ばかりに頼っていないでしょうか?
情報過多な時代に、体験を通して本来生まれ持った自分の感性を一度研ぎ澄ます必要があるのではないかと感じます。

 今回、物流を例にしましたが、飲食であれば厨房やホール、アパレルであれば店頭で接客をしてみる等、別に新入社員でなければ実習してはならないという規則を設けているところは少ないと思いますので、デスクワークで頭を使っているだけではなく、たまには、体を動かして情報収集をされてみてはいかがでしょうか?

フィルゲート 菊原 政信